
「間取りをつくらない家」という選択肢
家づくりの相談を受けていると、最初に必ず出てくる言葉があります。
「間取りを考えてきました」
A4用紙にギッシリ書き込まれた四角の集積。
でも、その多くは“暮らしの未来”ではなく、“過去に見た家の記号”の寄せ集めです。
建築家として全国で住宅を手掛けてきて思うのは、
「間取り」から家をつくると、家族の個性が消えるということ。
そこで私たちは、最初に「間取り」を描きません。
■ 間取りの前に「風景」をつくる
よく誤解されますが、間取りは“結果”であって“出発点”ではありません。
たとえば香川の住宅では、
外から一切見えない囲われた中庭が暮らしの軸になることがあります。
(→ 囲われた庭の住宅に興味があれば、
さりげなく 性能とデザインの家
東京の住宅では、視線の抜け方や都市の密度から逆算して、
“建物の形”そのものを暮らしの道具にする場合もあります。
■ 家族の「テンション」を測る
間取りではなく、人の“テンション”こそが設計の核心です。
- 朝の移動はスムーズがいいのか
- 料理中に家族の気配を感じたいのか
- 休日は閉じこもりたいのか、外へ開きたいのか
- 玄関からどれくらい「非日常」を演出したいか
こうしたテンションは図面には表れにくい。
だから私たちはVR・3D・モデルを使って、まずは“体験”をつくる。
(→ 空間を立体で把握したい人向けに
Metabrain Lab – パラメトリック×VR が自然と参考になる)
■ 「間取りを描かない設計」は、全国的に増えている
全国的に家づくりのスタイルは大きく変わりつつあります。
- 閉じる家(外に閉じ、中庭へ開く)
- 余白のある家(廊下=ワークスペース)
- ひとつの空間に“二層”の活動を重ねる家
- 高低差をあえて操作して視線を誘導する家
こういう家は、間取りから逆算してつくれません。
だからこそ、「間取りをつくらない設計」という思考法が重要になるのです。
■ ではどう家は決まるのか?
1. 敷地を読む
土地の潜在力を抽出するプロセス。
その一部はスタッフブログでも随時公開しています。
→ Staff Blog
2. 暮らしかたを聞く
“要望”ではなく“気分”を聞く設計ヒアリング。
3. 形を見つける
VR、模型、スケッチ、パラメトリックなどを併用し、
「間取りよりも体験」を先につくる。
4. 最後に間取りが自然に生まれる
結果として「間取り」が生まれるが、
依頼者自身が「こうなるのか!」と驚く場合も多い。
■ オリジナリティの源泉は「その家族の物語」
私たちは全国を飛び回りながら設計を続けていますが、
どの地域でも共通するのは、
家の設計は、人生の設計とほぼ同じ”ということ。
だからこそ、
間取りよりも先に「その人がこれからどんな景色を見て生きるのか」を考える。
そしてその答えは、
過去の記号ではなく、一人ひとりの“これから”の中にあります。
■ まとめ:間取りに迷ったら、まず「間取りから離れる」
全国的に見ても、家づくりの本質は大きく揺れています。
間取りアプリよりも大切なのは、
“どんな時間を、どんな空気の中で生きたいか”を言語化すること。
それができれば、家は勝手に形になっていきます。