「KAWAZOE-ARCHITECTS Official Blog|建築に込める思想と日々」

設計事務所の日常と思想、住宅・店舗設計、リノベーションのリアルを綴るブログ。

収納の重要性とミニマリストのアプローチ

収納は「広さ」ではなく「理由」で決まる

家づくりを始めるとき、多くの方が「収納はたっぷり欲しい」と仰います。しかし、本当に必要なのは「広さ」ではなく、その場所にその収納がある「理由」です。ミニマリストの収納術とは、単に物を減らすことではなく、自分にとって大切な物との『距離感』をデザインすることです。まずは、その本質をQ&A形式で紐解いていきましょう。

【Q1】「見せる収納」で生活感が出ないコツは?

結論から言うと、見せる収納を成功させる鍵は「余白」と「ライティング」の制御にあります。多くの人がやってしまいがちなのが、棚板いっぱいに物を並べてしまうこと。これでは展示ではなく、ただの露出になってしまいます。私が提案するHouse Designでは、棚の面積に対して物は6割以下に抑えるようお伝えしています。残りの4割は『透明な檻』、つまり何もない空気の層として扱うのです。そこにスポットライトで光の陰影を落とすことで、生活用品は「オブジェ」へと昇華されます。デジタル上で作成した独自のシミュレーションソフトを使い、光の当たり方を事前に確認することもあります。

【Q2】全部隠すと不便になりませんか?

「隠す収納」の最大の敵は、出し入れの面倒さです。これを解消するには「1アクション」で完結する動線設計が不可欠です。例えば、扉を開ける、箱を引き出す、という2動作ではなく、扉を開ければすべてが見渡せる、あるいは扉自体を空間のレイヤーとして捉え、普段は開け放しておける設計にします。私がかつて担当した大規模な商業施設、例えば大阪難波高島屋のリニューアルなどの経験から学んだのは、不特定多数が使う空間ほど、ロジックに基づいた収納の配置がストレスを軽減するということです。住宅でも同じです。使う場所のすぐそばに、蓋のない「隠し場所」を設ける。これが機能性と美しさを両立させるコツです。

【Q3】ミニマリストの適正な収納面積はどれくらい?

一般的に、収納面積は床面積の10%〜12%が目安と言われますが、ミニマリストを目指すなら、この数値に縛られる必要はありません。大切なのは「面積」ではなく「体積」と「頻度」です。天井高を活かした上部空間の活用や、階段下のデッドスペースを「情報の積層」として捉え、どの程度のボリュームをどこに配置するかをロジカルに計算します。私のPortfolioに掲載している事例でも、あえて収納を最小限にし、その分リビングの広がりや光の通り道を優先した住まいが多々あります。空間の構成を全体から見ることで、収納に取られるスペースを「贅沢な余白」に変換できるのです。

【Q4】将来、荷物が増えたらどうすればいい?

「今はいいけれど、将来が不安」という声もよく耳にします。これに対する私の答えは、「可変性(フレキシビリティ)」を持たせることです。壁一面を収納にするのではなく、必要に応じて家具を足したり、あるいは用途を限定しない「VOID(余白)」をあらかじめ間取りの中に組み込んでおきます。香川の穏やかな風景の中に建てる香川住宅設計では、土地のゆとりを活かして、将来的に外部倉庫を置けるスペースを確保することもありますし、逆に東京住宅設計の密集地では、壁の中に情報のレイヤーを埋め込むような、ミリ単位の精度が求められます。変化を恐れるのではなく、変化を受け入れるための設計こそが、誠実な住まいづくりだと言えます。

【Q5】建築家が自宅で実践している収納術は?

私自身、幼少期は父の設計事務所で溢れる図面や職人道具に囲まれて育ちました。その反動もあり、デジタルとフィジカルの融合には人一倍こだわりがあります。自宅では「データ化できるものはすべてクラウドへ」という思想で、紙の資料や本は最小限にしています。一方で、物理的に残すべき「土地の記憶」や「家族の思い出」は、美術館の展示のように、あえて「厚い皮膚」のような重厚な棚に一点だけ飾る。すべてを隠すのではなく、主役を絞り込む。そうすることで、空間にリズムが生まれ、飽きのこない住まいになります。具体的なテクニックについては、弊社のArchitecture How-Toでも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ:あなたにとっての「心地よい密度」を見つけよう

収納を見せるか隠すかは、単なるスタイルの選択ではありません。あなたが毎日どんな景色を見て目覚め、どんな静寂の中で眠りたいかという、生き方の選択です。私たちは、施主様との対話を通じて、その「心地よい密度」を一緒に探していきます。悩んだときは、まずは「なぜこれを取っておきたいのか?」という根拠を整理することから始めてみませんか。きっと、新しい空間の可能性が見えてくるはずです。

よくある質問(FAQ)

収納が少ないと部屋が散らかりませんか?

部屋が散らかる原因は、収納の量ではなく「物の定位置」が決まっていないことにあります。設計段階で生活動線を徹底的に分析し、帰宅してから寝るまでの動きに合わせて収納を配置すれば、少ない容量でもスッキリとした暮らしを維持できます。

子供がいる家庭でもミニマルな収納は可能ですか?

もちろんです。子供の成長に合わせて使い方が変えられるよう、オープンな棚とボックスを組み合わせる方法がおすすめです。すべてを隠そうとせず、「子供の作品を飾る場所」と「おもちゃを放り込む場所」を分けることで、親子ともにストレスのない環境が作れます。