建築家の思想・設計哲学
家の中にいながら、遠くの景色や空の広がりを感じる── そんな体験は、眺望の設計によって生まれます。 建物の向きや窓の配置だけではなく、 「どこに立ったときに、どのように景色が切り取られるか」までを 丁寧に設計することで、日常の中に“ご褒美のような…
人は、目で空間を覚えているようで、 実は、手のひらの感触でも記憶しているものです。 冷たい金属の感覚、 あたたかな木のぬくもり、 ざらついた左官壁の表情── それらすべてが「住まいの記憶」になります。 素材の手触りが生む感情 朝起きて最初に触れる無…
「眺めの良い土地に家を建てたい」 「高台から見える景色が好きだ」 ──そんな言葉をよく耳にします。 けれど、建築家としてこう思います。 眺望は、単なる“見晴らし”ではない。 高さ差が、暮らしに新しい風景をもたらす鍵になる。 高さ差が空間にもたらす価…
建築は、形と素材だけでは完成しません。 それらを“編む”のは、光と影です。 光が差し込み、影が深まる。 そのリズムこそが、空間に豊かさを生む。 光と影が生み出す、空間の輪郭 柔らかな朝の光が、床を撫でるように照らす 木漏れ日が壁に揺れて、時間の流…
「屋外は屋外、屋内は屋内」 そんなふうに、空間をきっちりと分けることが “正しい暮らし”だと思われがちです。 でも、建築家としてこう考えます。 “外”と“内”をはっきり分けすぎないことが、 暮らしに思いがけない豊かさを生む。 境界を曖昧にすることで生…
「余白のない家は、暮らしを詰め込むだけの箱になる。」 ──そう考えています。 余白があることは、単なる“贅沢”ではなく、 人の心を自由に遊ばせるために必要な条件です。 余白が生む心の静けさ 必要以上に詰め込まないことで、視線と呼吸が整う 使い道を限…
雑誌に載るような洗練された住まい。 SNSで映えるホテルライクなインテリア。 生活感を感じさせない、美しい空間。 ──それらを「理想の家」と感じて、 設計や内装に強く反映させるケースが増えています。 けれど、こうも思うのです。 見せるための家と、実際…
「将来のために子ども部屋を用意しておきたい」 「2人きょうだいなので、部屋は2つ必要です」 「子どもの自立のためには個室が必要だと思う」 ──そうした声は多く聞こえてきます。 でも、こうも思うのです。 子どもに“部屋”を与えることは、 本当にその子の“…
「収納は多いほうがいい」 「とにかくモノが片付けられる家にしたい」 「収納が足りないと、暮らしが乱れる気がする」 ──そんな声をよく聞きます。 もちろん、収納は暮らしに欠かせない機能です。 でも同時に思うのです。 それは“安心”のための収納なのか、 …
設計図は、すべてを描ききるものではありません。 建築家が寸法を決め、構造を整え、生活動線を設計しても、 そこに“居場所”が本当に宿るかどうかは、住み手に委ねられている部分が多くあります。 居場所とは、“使われた空間”が変化して生まれるもの 庭に出…
「リビングを中心にした間取りが理想です」 「家族みんなが集まれる、広いLDKをつくりたい」 「リビングを核にすれば、自然とつながりが生まれる」 ──そうした言葉が当たり前になった現代住宅。 けれど建築家として、こう問いかけたい。 “リビング中心”であ…
「玄関はただの通路」 「屋内と屋外ははっきり分けたい」 「使わない空間は無くしたい」 ──そんな考えが当たり前になった今、 あえて“土間”という曖昧な空間を設けることに、 どれだけの意味があるのか。 建築家として言えるのは、 土間は暮らしの可能性を開…
家を建てるとき、 多くの人が“完成した姿”を求めます。 無垢で真新しい内装 新築の香りと光沢 汚れや傷のない完璧な仕上がり でも、本当にいい家とは── “時間が染み込んで、味わいが深まっていく家”ではないでしょうか。 「完成」ではなく、「成長する空間」…
人の記憶に残る建築には、 共通して“触覚”が刻まれています。 床の無垢材のぬくもり 土壁のわずかなざらつき 真鍮の冷たくなめらかな手すり コンクリートの乾いた質感 それは目で見た情報以上に、 心と体に直接残る「感触の記憶」です。 見た目以上に、触覚…
都市に住むということは、 便利さと引き換えに「音」と「情報」に常にさらされることでもあります。 車の走行音 隣家の生活音 駅のアナウンス ネオンや看板、通行人の視線 人は気づかぬうちに、 「静けさのない空間」に心をすり減らしています。 “静けさ”は…
「段差のない家が理想です」 「バリアフリーにしたい」 「土地に高低差があるので避けたいです」 そんな声を聞くたびに思います。 “高低差=不便”と見なすのは、もったいない。 高低差は、 空間に“流れ”や“奥行き”、 そして“ストーリー”を生み出せる、 可能…
「無駄のない間取り」 「動線を最短にした効率的な設計」 「家中をフル活用できる設計」 ──そんな言葉が好まれる今、 “余白”のある間取りは否定されがちです。 でも本当にそれでいいのでしょうか? 空間効率だけを追いかけた家の末路 どこにいても何かの動線…
多くの人が「日当たりの良い家」を望みます。 けれど、一日中、太陽が照りつける空間は本当に快適でしょうか? 風の抜け道も、 影の落ちる場所も、 実は“居場所”をつくるうえで重要な設計要素です。 日当たり=快適、とは限らない 午後の日差しが強すぎて、…
「南に大きな窓をつければ、明るい家になる」 「窓を増やせば、風通しが良くなる」 「窓は多いほど良い」 ──そう信じて、 設計段階で“とにかく大きな開口”を求める人は少なくありません。 でも実は、 窓の数や大きさだけでは、快適さは決まりません。 「明る…